優鬱パースペクティブ

やさしい世界のふたりごと

□:頭の中がわーっとなって何も手につかなくなることってないですか?
○:わーっと?
□:わーっと。
○:自分のことになると表現力落ちるよね
□:自分のことなんて分かるわけがないじゃないですか
○:同じわーっとなのかはわかんないけど、あるね
□:どうします?
○:寝るかな
□:眠くない時は?
○:遊ぶかな
□:それですよそれ。遊ぶと頭のわーっとは取れるんですか?
○:取れることもあるし、取れないこともある
□:取れなかったら?
○:取れるまで遊び続けるか、寝る
□:遊んだり寝る余裕がなかったら
○:そういう余裕がなくなったら負け
□:ああ……
○:だからさ、余裕持って生きようよ
□:そんなの持ったら私じゃなくなる気がします
○:あー
□:やらなくちゃいけないことが山積みなとき、どうするんですか?
○:やらなくちゃいけないことって何
□:生きるための仕事とか、将来のための勉強とか、生活を維持するための家事とか
○:それ、本当にやらないとダメなの?
□:ダメですよ何言ってるんですか
○:仕事も勉強も全部やめちゃって、親に頭下げて実家に住ませてくれって言ったらなんて言われる? うるせえクズ、一人で生きていけって蹴り出される?
□:それは……たぶん、そうはならないですね。よほど深刻ならしばらくは居させてくれるはずです
○:じゃあそれでいいんじゃないの? 私なんてそんなだし
□:でも、それは人としてダメな感じが
○:えっそれ私はどうなるの
□:他意はないです。自分への基準と他人への基準は違うので
○:常識的にそうだから? 世間体があるから? 私らにそんなの今更必要?
□:確かに今更どうでもいい感はありますが
○:でも納得行かない? 私に対しては許せるのに自分に対してはダメ?
□:さっきの「余裕を持ったら私じゃなくなる」にも通じるんですけど
○:うん
□:私が私としてこの世界に存在することを私自身が許すために、どうしても超えなければいけない基準ラインがあるんだと思います
○:基準ねえ
□:元々私はわたしのことが嫌いですから。嫌いな自分を辛うじて消さずに済むための、納得行く拠り所が必要なんです
○:なるほどね、私がニートでも、私のことは嫌いじゃないからOKと
□:そうです。好きな他人が働かなかったところで軽蔑したりはしないですが、ただでさえ嫌いな自分がそうなったらもう存在価値がないと感じると思います
○:その基準、変えられないの?
□:たぶん一生このままですね
○:でもここから急にやること楽々消化できるようになったりしないよね?
□:しないでしょうね
○:わーっとなるのを克服できることも?
□:ないでしょう
○:どうすればいいんだろうね?
□:どうしようもなさそうです
○:……頑張るしかないんじゃない? やれる範囲で、できることを
□:そうですね
○:頭の中のわーっと、消えた?
□:消えました