優鬱パースペクティブ

やさしい世界のふたりごと

○:思うんだけどさ
□:はい
○:人間、むしろ不完全なほうが魅力的だったりするんじゃない?
□:唐突ですね
○:そうね
□:完全な人って、完全でない人よりも優れているわけでしょう
○:まあね
□:で、優れている人のほうが魅力があるわけですよね
○:そう?
□:下手な絵より上手な絵の方が魅力的じゃないですか?
○:絵が下手だけど商業作品よりずっと魅力的な同人作品だってあるよね
□:ありますけど、それはストーリーが商業作品より優れているからでは
○:そうかも
□:とすると、やっぱり、総合的に優れてる人間のほうが魅力的なのでは
○:でも、完璧人間ってとっつきづらいじゃん
□:それはあります
○:人間にとっての評価軸はいろいろあってさ。作品としての素晴らしさ、ものとしての美しさ、なにかがそういう面から評価されることはあるけど。でも、人間って人間だし。この人は私と同じだ、私の気持ちをよくわかってる。そこから生まれる共感、親しみ、引き込まれる度合い。そういうのが魅力になるんじゃないの
□:なるほど
○:不完全だからっていうのともちょっと違うか
□:「自分と同じような欠陥を持ってる」が正しいですね
○:そうね
□:この人は私と同じようなことが苦手で、だから仲間である。人間味を感じる、だから好きになる
○:だから、私らみたいに傷を舐めあってつるむと居心地がいいと
□:けど、私達って常人の範囲を超えてクズじゃないですか
○:そうね
□:だから、私達の不完全さをひけらかしても共感は得られないんですよ
○:あー
□:むしろ怠け者として迫害されます
○:実際怠けてるからね
□:そうですね
○:あーもーみんなもっと怠けようぜーなんでそんなそつなく生きちゃってるのー使えるものは使ってかじれるスネはかじって自由に生きりゃいーじゃないー
□:何のために人類は豊かになったのかって話ですよね
○:誇りかー? プライドとかいうのがあるからかー?
□:完全なものに潰されるのは私達だけじゃないんですよきっと
○:というと
□:彼らだって私達ほどじゃないけど元は不完全で、でも不完全だと迫害されるから、完全に近づくように軌道を修正してきたんです
○:それで完全が身についちゃったあと、今度は迫害する側に回るのね
□:まあなので、完全になる才能が足りない私達の問題です
○:生まれが悪かったかー
□:自分が努力でなんとかできてしまったことは、他人も努力でなんとかなると思いがちですから
○:いやね、私らだってクズのままでいいと思うわけないじゃない。今はともかく昔はまだスレてなかったしさ。できることならなんとかしたいと思ってたし、頑張ってきたわけよ。10年単位でそんな感じで足掻いてきたわけよ
□:多数派の人たちも変えられない不完全さは持っていて、だから広く共感できる弱みが生まれる。ただ、少数派の人たちとその内訳が違いすぎる
○:想像力を持ってくれって話だよなー
□:多数が社会のルールです
○:ままならないね